九銘協さんのこと〜やっぱり挑戦は楽しい〜
こんにちは!
最近インプットする機会が多いです。「センス」って何だか先天的なもので「生まれながらの才能」だと思う方も多いかもしれませんが、僕はそれは違うと思っています。
センスっていうものは、学ぶ事が出来る定量可能な「学問」だと思います。どんなものからどう学ぶかってことが大切だと思います。
勿論、「どんな人からどんなものを通して何を学ぶか」はちゃんと選ばないと、全く見当違いのものが身に付いてしまうのでそこは見極めが必要だと思っています。
先日、材木屋さんの九銘協さん(材木屋さん)のところに訪問しました。社長の峯さんはとても面白い方です。力学や材料学にとても明るい方でお話を聞いていて毎回とても勉強になることばかりです。
現代において(材木業界の事はあまり詳しくは無いのですが)材木屋さんが経済的に経営を回そうとすれば多分「プレカット(建築を建てる時、プラモデル的にできる柱材や梁材を加工)」とか本業の横展開で「住宅設備の販売」やそれに紐づく「簡易的なリフォーム」っていう、その辺の経営モデルになると思います。でもその業界はレッドオーシャン化してて(だって資金投入して設備投資すればだれでも出来る事なので)不可価値はすごく低く数をこなさないと経営的に成立しないモデルになっていると思います。
でも、九銘協の峯社長は違います。
彼は、素材を開発し、素材をどう使うかを考えている方です。私たちデザイナーにとって素材とは最も重要な要素のひとつです。
峯社長からたまにご連絡を頂き「こんなもの作ったぜ、どうだ!」的なプレゼンをされます。彼と色々と話すことは本当に楽しいのです!
今回はこんなものを考えられていました。↓
写真では素材感をお伝えするのは難しいのですが、頑張ってみます!
こちらの杉柾目(柾目は木目が真っすぐになるように木取りする方法。木目としてイメージしやすい波紋のような木目は板目と呼ばれます)はすごーーーーーーく美しい素材の表情と手触りでした。
写真を良く見て頂くと分かると思うのですが、表面が凸凹しているのが見えると思います。これは「浮造り」という加工技術です。
まずこちらの杉は単なる杉ではなく奈良の「吉野杉」です。今回社長に教わったのですが九州で植林される杉はある期間できまった時間軸で作られる杉で、材としての採算性を考慮されて作られた杉だそうです。結果柾目があまりまっすぐではなくなります(それはそれで決して悪い事だとは思いません)
またまた、よーく写真を見て頂くとわかると思うのでですが、色の濃い部分(冬目)が凸、色の薄い部分(夏目)が凹になっています。
成長が遅くじっくりと育つ冬は堅い凸になり、成長が早い色の薄い部分は柔らかい凹になります。「浮造り」加工とはその柔らかい成長の早い夏の時期に育った「夏目」を刃物を調整することで削りだすことによって木目を立体的に表現する技法です。
この技術と杉の特性を活かして今回の素材を開発されたとのこと。
杉って「和」の雰囲気を作ってくれる素材ですが、柔らかくて傷が付きやすい素材です。高級寿司店や和食屋さんで素材として杉を採用したいのですが、その柔らかい特性の為傷が付きやすい素材で採用をためらってしまいます。でも峯社長はそれを解決しようと今回の素材を思いつかれたそうです!
「浮造り」によって傷が付きやすい柔らかい「夏目」を予め削ぎ落としておく。結果堅い「冬目」がより木の表情を際立たせてくれる。
この解決はすごくデザイン的な発想だと感動しました。ネガティブな要素を逆手に取ってボジティブに転換しています。しかもそんなに特別なことをぜずに。
この発想はかなりクリエイティブです!いやーーー感動しました!
弊社にて進行中の案件でこの素材の使用にぴったりのプロジェクトがあるので是非使わせて頂きたいと思っています。
それでは!