現場調査から学ぶリノベーション前に知っておきたいこと Vol:3
〜電気設備、ガス設備の現調〜
今回の記事では電気設備(分電盤、照明器具(コンセント)、エアコン、インターホン、オートロック、防災設備、電気容量)とガス設備(給湯器)の現場調査をとりあげたいと思います。
(目次挿入)
電気設備の現調
電気設備の現場調査(以下現調)の現調項目と現調理由を以下の表にまとめています。
現調事項 | 現調理由 |
---|---|
分電盤 | 分電盤の位置は引き込み線の電線の長さやマンション側からの引き込み位置によっては移動が難しい場合があります。分電盤を隠したい場合などのケースに備えて現場の位置を抑えておきます。また200Vの電気設備を設置できるかどうか「単相3線式」かどうかを確認します。マンションの場合単相3線式の場合がほとんどですが、古い戸建ての場合は「単相2線式」のケースもあるので200Vの電化製品を使用予定の場合は変更工事が必要になります。 |
照明器具(コンセント) | 埋め込みダウンライトにしたい場合に備えて天井の懐(ふところ、天井裏のスペース)がどれくらいあるかを確認します。コンセントはスケルトンリノベーションの場合は自由に設置できますが、部分リノベなのど場合に使い勝手に不都合がないかなどを確認します。 |
エアコン | 既存のエアコン設置場所、台数、OAスリーブの位置を確認します。リノベ後の間取り変更の際にエアコンが問題なく設置できるかどうかを確認します。 |
インターホン、オートロック | 既存のインターホン位置を確認します。スケルトンリノベーションの場合は好きな場所に設置できるのですが、部分リノベーションや既存壁を残す場合は設置場所に制限がでてくるため確認しておきます。オートロック付きのインタホーンの場合、基本的にマンションの規約上新品に交換することは難しいケースが多くなります。黄ばんでいたり古くなってしまっている場合、気になる方は塗装したり扉内に隠したりと検討する必要があります。 |
防災設備 | マンション室内の連動型(他住居と連動している)の防災設備の有無を確認します。移設の可否や増設数を確認します。マンション管理規約によっては移設、増設、交換の場合にはマンション指定業者での施工が定められているケースがありますので連絡先などを確認します。 |
電気容量 | 既存の電気容量を確認します。新しい生活で電気容量のアップが必要な場合(例えば床暖房、IH、食洗機、エアコンの増設など大幅に電気容量がアップしそうなケース)には契約アンペア数の変更が可能か確認します。 |
ガス設備の現調 | プロパンか都市ガスを判断します。また給湯器の確認を行います。号数や年式、「給湯専用」や「追い焚き」などの確認を行います。 |
分電盤
こちらが分電盤になります。
赤丸で囲んだ部分に「単3」という表記が見えるとおもいますが、これが「単相3線式」ですよということになります。電気メーターにも「単3」という表記が確認できますね。
下の写真が分電盤周りの解体写真です。
分電盤とは「電気を分ける盤」と書きますよね。要は太い幹線(引き込み線)をこの盤を介して室内の各所に配る機能を果たしています。
この幹線を変更することは基本難しいのでこの太い幹線の長さがどれくらいあるかで分電盤がどこまで移動できて設置できるかが決まってくるようになります。
分電盤 まとめ
照明器具
照明器具の既存の状況を確認します。
まずは一般的な埋め込みダウンライトを確認してみましょう。
赤丸部で「埋込必要高80」という表記が確認できます。これは天井裏に最低80mmの高さが必要ですよ、ということです。
既存天井照明がシーリングライトで下写真のように「躯体埋め込み」で配線されている場合は埋め込みダウンライトを設置したい場合には新たに天井を組み設置スペース80mmを確保する必要があります。
最近流行の躯体表し天井の場合は鉄管内に配線して「直付けダウンライト」や「ペンダントライト」という製品を設置することも可能です。(下写真は鉄管配線にペンダントライトの例)
ただし「躯体表し天井」がいやだという方は天井を新規で組む必要があり天井高が下がるというデメリットもあります。
エアコン
続いてはエアコンの現調です。まずはエアコンの冷媒管とドレイン(排水)を通す穴「スリーブ」の位置を確認します。下の赤丸が「スリーブ」です。
現場の位置のままエアコンを設置したい場合は問題ないのですが、間取りを増やしたい場合、エアコンが付いていない箇所に移動したり、新規で取り付けたいとなると少し工夫が必要になります。
「スリーブ」という穴がない場合「コア抜き」と言って躯体壁に新たに穴を開ける必要があるのですがこの「コア抜き」を認めているマンションはまれです。大体のケースが管理規約で禁止されています。
「コア抜き」ができず、かつ給気に問題がない場合はOAスリーブと言われる外気を取り込む穴をうまく利用したりします。
エアコン まとめ
インターホン、オートロック
インターホン、オートロックの位置の現調です。通常のインターホンの場合はモニター付きのものに交換可能です。ただしオートロック付きのものや火災報知器と連動しているものを新規に交換する場合は管理組合に問い合わせる必要があります。
交換ができない場合、黄ばみや古さやが気になる場合は扉を作ってその中に納めたり、塗装したりすることになります。
写真のインターホンはオートロック、連動式火災報知器タイプ
防災設備
マンションの防災設備は主なものに煙感知器、熱感知器、ガス漏れ警報器があります。天井に下写真のようなものが付いていると思いますがこれらが防災設備になります。
築古のマンションの場合は全く設置されていないケースもありますのでリノベーション後は設置基準に従って電池式の各防災設備を設置すことになります。
スケルトンリノベーションの場合、大きく間取り変更することになると思いますのでこの防災設備の現調は重要項目になります。
連動式の防災設備が設置されている場合は間取り変更によって移設、新設していくことになります。
物件ごとで管理規約によってこの防災設備の移設、増設に関してはマンションの指定業者にて施工すること、という規約がある場合がありますので管理組合に確認しておくことになります。
電気容量
オール電化にしたい方やIH、床暖房、食洗機を使用したい方は電気容量を事前に確認しておく必要があります。以下一般的な契約アンペア数です。
1人暮らし・・・・10~20A
2人暮らし・・・・30A
ファミリー・・・・40A
オール電化・・・・60A
既存マンションによっては電気容量アップの限度がある場合がありますので、新しい家ではオール電化にしたいなどご要望がある場合には物件選びに注意しておく必要があります。
契約できる最大のアンペア数は電気メーターを確認します。
この物件の場合、赤丸の箇所に60Aと確認できます。つまり60Aまで契約できるということでオール電化の生活のための設備機器を導入することに問題ないことがわかります。
温水器やIH、食洗機、エアコンなど新しい生活に導入したい設備機器がある場合、そもそもマンション側のスペックでどれだけ電気容量をアップできるのかを確認することが重要になります。
電気設備現調 まとめ
ガス設備の現調
ガス設備の現調をご紹介します。主に給湯器にかんする記事になります。
ガス設備に関するリノベーション時の主なご要望は「給湯器の交換」と「追い焚き」にしたいというものです。
給湯器の耐用年数は一般的に10年です。型式から製造年月日が分かりますのでそれをもとに交換するかどうかのご相談をすることになります。
追い焚きにしたいというご要望の場合は、追い焚き配管が問題なくできるかどうかの確認をします。
既存給湯器が追い焚き仕様になっているかどうかを確認することは非常に簡単で給湯器のリモコン表示に「おいだき」の記載があれば新規給湯器も追い焚き仕様にすることが可能です。おいだきの表記がない場合は「給湯専用」の給湯器がはいっていることになります。
既存の給湯器が「給湯専用」の場合は追い焚き配管のルート確保が可能かどうかを確認します。物件によってはルート確保が難しく追い焚き仕様の給湯器の導入が困難な場合もありますので現調によって状況をおさえておきます。
また、古い団地のリノベーションの場合など屋内に給湯器が設置されていることもあります。
このケースの場合、屋外に新規給湯器を設置したいので、設置場所の確認と配管ルート、電気供給の可否を確認する必要があります。
屋外から室内に配管を引き込むため、やはり先ほどのエアコンの記事でもかいたように「スリーブ」という躯体壁の「穴」が必要になります。
室内に給湯器がある物件の場合、すでに他の居住者がリフォームなどして屋外に給湯器を設置しているケースが多いのでベランダなどから他の住居の確認をするとよいでしょう。