現場調査から学ぶリノベーション前に知っておきたいこと Vol:5
〜躯体(構造)の現調〜
今回の記事では躯体(構造)の現調になります。
鉄筋コンクリートマンションの場合、構造として色々とあるのですが代表的な例として「ラーメン構造」と「壁式構造」を取り上げます。
- 「ラーメン構造」柱と梁で構成されていて室内間仕切り壁は解体することができ自由な間取りができる構造
- 「壁式構造」築古の物件や団地にみられることが多く、室内の壁自体が鉄筋コンクリートの壁構造になっている。そのためこの構造壁を解体撤去することはできず間取り変更に制限がでてくる。
躯体(構造)の現調はまずこの「ラーメン構造」か「壁式構造」かを判断することから始めます。
室内に柱型があり天井面に梁がある場合はほぼ「ラーメン構造」で室内に柱型がなく梁もない場合そして間仕切り壁が厚い場合は「壁式構造」と判断することが可能です。
躯体(構造)の現調
躯体の現場調査(以下現調)の現調項目と現調理由を以下の表にまとめています。
現調事項 | 現調理由 |
---|---|
躯体間寸法 | スラブ間寸法を現調します。配管や配線のために床下寸法をどれくらい確保し、照明器具の設置により天井スペースを確保した場合にどれだけ天井高を確保できるかを把握するために確認します。 |
梁下寸法 | スラブから梁下までの寸法を確認します。梁が新しい動線に絡んできて梁下の天井高が低くなりすぎないか、また排水経路を確保する際に段差を設けた場合、通行不可の高さにならないか等を検証するために現場状況を確認します。 |
柱寸法 | 基本的に部屋の隅や隣地壁側にあることが多い柱の寸法を確認します。これは居室内に柱が出てくる場合に家具レイアウト等のじゃまになったり通路幅が狭くなりすぎないように計画する際に重要な情報になります。 |
躯体間寸法
占有部内の躯体間寸法を確認します。竣工図がある場合は次のように簡単に確認できます。
赤丸の部分が躯体間寸法で、2500mm+140mm+天井裏(約80mm)=2720mmということになります。
この躯体間寸法の数字は重要でリノベーション後に配管の関係でどれだけ床下スペースとるか、ダウンライト等の天井設備でどれだけ天井裏ペースをとるかで天井高の寸法が決まってきます。
具体的に実例から見たいと思います。
キッチンの排水勾配の確保のために床下スペースを150mm確保しています。
天井裏はダウンライト設置のために100mm確保しています。
躯体間寸法が2600mmのためキッチン天高は2350mmとなります。梁下は1870となり背の高い人にとっては窮屈に感じるかもしれません。
このように躯体間寸法はキッチンをどこに置くかや天井の照明は何にするかなどによって天井高が決まってくるので打ち合わせ時に大切な情報になります。
より天井高を確保したい場合は次の方法が考えられます。
- スケルトン天井にして天高を上げる
- キッチンの配置を変えて床下スペースを小さくする
- キッチンの排水ルートのみ段差をつけて勾配スペースを確保する
何を優先するかによって対処方が変わってきますので躯体間寸法からの天井高の割り出し、対処方の検討を打ち合わせていくことになります。
梁下寸法
梁下寸法の現調は梁下に設置するものや梁下の「天高」を検討するのに役立つ情報となります。
「梁」はマンションの構造体なので移動させたり撤去することはできません。この梁の寸法を現調でおさえておくことはリノベーションのプランニングをする際に重要な情報となります。
それでは具体的にみていきたいと思います。
こちらはユニットバスの例です。
「梁の高さ」が580mmの場合、スラブ〜梁下寸法が2020mmの例です。
図を見てわかるようにユニットバスが物理的におさまらないことがわかります。
この物件のケースの場合は梁にからんでくる場所にはユニットバスを設置できないということがわかります。
次にこちらの図をみてください。
こちらはユニットバスが梁をかわしていますが換気ルートが梁に絡んでくる例です。梁にスリーブと言われる「穴」が開いていて換気ダクトが梁を貫通できる場合は問題ないのですが、ない場合はこちらの位置にもユニットバスを設置することができません。
次は梁下の天高の例を図でみてもらいます。
脱衣所の床をユニットバスに揃えようとする場合、梁下寸法が1821mmとなり脱衣所入り口の高さがかなり低くなってしまう例です。
この場合、洗濯機や洗面台の排水勾配に問題がなければ脱衣所の床レベルを下げるか、ユニットバス、脱衣所の間取りを変更するかなどの検討を行います。
ちなみに、事前に梁下寸法を現調にて把握しているため初期プランのご提案時に梁下寸法のご説明をして無理のあるプランは提示しないようにしています。
梁下寸法 まとめ
柱寸法
室内に出てきている柱の寸法を現調します。
柱もマンションの構造体で移動させたり撤去することはできません。
柱の寸法を押さえておくことで家具の配置や通路の確保などプランニングする際に必要な情報となります。
柱寸法は様々なことを検討するときに大切な情報になります。